読書記録9

失踪家族 (ヴィレッジブックス)

失踪家族 (ヴィレッジブックス)

日本初紹介となる、アメリカ生まれで現在はカナダ・トロント近郊在住のリンウッド
・バークレイの’07年発表のサスペンス。
本書は、カナダ推理作家協会の最優秀ミステリーに贈られるアーサー・エリス賞と、
’97年に創設されたアメリカのミステリー専門季刊誌≪デッドリー・プレジャー≫が主催するバリー賞にノミネートされた。イギリスでヒットし、世界30カ国以上で翻訳された。
アメリ東海岸コネティカット州で、高校教師である夫の‘わたし’テリーと8才の娘
グレースと暮らす、ごく普通の主婦シンシア。しかし彼女にはショッキングな過去が
あった。14才の時、5月のある朝、両親とふたつ年上の兄が忽然と姿を消したのだ。
あれから25年、あるテレビ番組に出演したのをきっかけに、シンシアの周りで不可解な出来事が起こり始める。そして殺人事件まで・・・。一家の過去を探り、自らの家族を守るべく、‘わたし’は立ち上がる。
物語は中盤を過ぎても過去の秘密は闇の中。‘わたし’は何も誰も信じられなくなる。警察も、探偵も、愛する妻シンシアさえも。やがて小さな手がかりから、シンシアの昔のボーイフレンドでギャングのヴィンスと共に真相に迫るのだが、そこに浮かび
上がったのは妻の人生を翻弄してきた驚愕の真相だった。
ページを捲るのがもどかしいくらい、畳み掛ける謎とサスペンスの連続。
やがて明かされる、失われた家族の姿とその悲劇。そして終末にいたって驚きの
“どんでん返し”。
本書は、ショッキングで誰もが興味を惹くテーマ、秀逸なプロット、意表をつく事実と
さらにその先の真相。どれをとっても最上級の評価に値する傑作である。