読書記録22

Story Seller〈3〉 (新潮文庫)

Story Seller〈3〉 (新潮文庫)

新潮社の<読み応えは長篇並、読みやすさは短篇並>をキャッチフレーズにした、
アンソロジー。本書は、執筆陣が『2』の伊坂幸太郎本多孝好に替わって、湊かなえさだまさしが加わり、ボリュームも増したその第3弾。
『男派と女派 ポーカー・フェース』沢木耕太郎:自身の初めての体験を語る、年の割りに(失礼)若々しく瑞々しいエッセイ。「男派」「女派」をもっと掘り下げて言及しても
よかったのでは。
『ゴールよりももっと遠く』近藤史恵:著者お得意の『サクリファイス』のスピンオフ。
自転車ロードレースの“エース”としてのプライドがのぞく。
『楽園』湊かなえ阪神・淡路大震災のあと“身代わり”として育った‘わたし’が南国の楽園トンガで自分を取り戻す。
『作家的一週間』有川浩:パロディーに徹した、笑える“脱力系”一週間日記。
『満願』米澤穂信:若手弁護士‘私’こと藤井が弁護した殺人事件の被告人は、苦学生だった頃の下宿先の奥さんだった。‘私’が振り返る当時の思い出。ミステリーとしての謎も併せ持ったノスタルジックな秀作。
『555のコッペン』佐藤友哉:東京駅で殺人の容疑者にされた‘オレ’こと、謎の過去を持つ若者・土江田(とえだ)と、女子高生探偵の赤井が『1』『2』に続いて登場。
今回は、前2作のような本格パズラーの趣向ではなく、なんとなく浮遊感のある不思議な展開で、土江田の正体の一端がわずかながら明らかに・・・。
『片恋』さだまさし:‘ワタシ’ことTVの下請け制作会社のスタッフ、石橋南に朝早くからかかってきた警察からの電話。それは全く見知らぬ男の交通事故死の報せだった。
やがて思いもよらない事態に巻き込まれる南。
最後はホロリとしてしまう純愛ストーリー。
『1』『2』に引き続き、いずれ劣らぬ名品揃いで、またまた楽しい読書時間を過ごすことができたが、本書でこのシリーズが打ち止めとは実に惜しい気がする。