読書記録26

叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)

叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)

’10年、「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門で第2位、「このミステリーが
すごい!」国内編で第3位にランクインした、注目の大型新人・梓崎優(しざきゆう)のデビュー作。
伊坂幸太郎の名作『アヒルと鴨のコインロッカー』(’03年11月)を第1弾とした、
東京創元社の“次世代を担う新鋭たちのレーベル”≪ミステリ・フロンティア≫の
第60弾。’08年「第5回ミステリーズ!新人賞」を、全選考委員絶賛のもと受賞した「砂漠を走る船の道」を第1話に据え、短編5作からなる連作本格ミステリー。
海外動向を分析紹介する雑誌社の若手社員で、外語大出の7ヶ国語を操る斉木は
取材のために訪れた世界各地でさまざまな事件や出来事に巻き込まれる。
「砂漠を走る船の道」(<ミステリーズ!>vol.31):サハラ砂漠の“塩の道”をゆく
キャラバン隊が帰路砂嵐に襲われ、続いて起こる謎めいた連続殺人。
白い巨人」(書き下ろし):中部スペインで、数百年前に風車の中で消えた兵士と、
1年前に同様の状態で消えた友人の恋人の謎。
「凍れるルーシー」(<ミステリーズ!>vol.37):腐敗しないままの聖人の遺骸を
祀っている南ロシアの女子修道院の遺体をめぐる事件。
「叫び」(書き下ろし):南米アマゾンの密林の奥地。疫病が流行し滅びに瀕している
少数民族の村で起こった惨劇。
「祈り」(書き下ろし):・・・そして、旅路の果てに斉木を待っていた運命。
本書は、「白い巨人」の真相のあっけなさや、賛否の分かれる最終話完結編「祈り」を差し引いても、“叙述ミステリー”、“時間差の錯覚”などの手法を取り入れ、かつその
土地ならではのシチュエーションや価値観が犯行の動機や謎と密接に関った
本格パズラーを構築しているところに新鮮な読みどころと意義がある。