読書記録30

wakaba-mark2011-02-14

幻の終わり (創元推理文庫)

幻の終わり (創元推理文庫)

伊坂幸太郎が自身のエッセイ集『3652』(表紙写真右上)の2003年のなかで、
「読んでいるだけで幸せな気分になりました。」と述べている作品。
<ニューヨーク・スター>紙の敏腕記者ジョン・ウェルズが主人公のハードボイルド
・シリーズ第2作。’91年、「このミステリーがすごい!」海外編で第5位になっている。
ニューヨークにそのシーズン最初の大雪が降った12月の夜。‘わたし’ことウェルズは、行きつけのプレス・クラブで、政情不安な国を中心に取材している著名な
海外通信員ティモシー・コルトに出会った。それぞれの連れと別れて店を出た後も彼のホテルまで付き合い、つぶれるまで飲んだ。翌朝彼は、部屋に乱入した謎の暴漢に
殺される。目撃者として自らも襲われた‘わたし’は格闘の末、辛くも難を逃れる。
‘わたし’はコルトが前夜もらした「エレノア、エレノア。おれのエレノア」をもとに事件の真相を探る。やがて、10年前に起きたアフリカの小国セントゥーでの反政府暴動に謎が隠されていることがわかってくるが、執拗に殺し屋が追いかける。そんな‘わたし’がたどりついたのは、エレノアに憑かれた男たちの“妄執”であり、あるジャーナリストの“裏切り”だった。
派手なアクションシーンをこなすタフネスをほこり、ハード・ドリンカーで
ヘヴィ・スモーカー、娘に自殺され、離婚を経験、自殺カウンセラーであるチャンドラー
・バークに切ない恋心を抱く、机のうえは乱雑でワープロを拒否してただひとり頑固にタイプライターをたたく、あくまでジャーナリストとして真実を暴こうというプロ根性に
あふれた男。
本書は、この物語を一人称一視点で語る、そんな46才の‘わたし’こそが最大の
読みどころである。
なお、ピータースンは、本名のアンドリュー・クラヴァン名義で発表した圧巻の
イムリミット・サスペンス、映画化もされた『真夜中の死線』(’95年・訳出は’99年「創元推理文庫」。’00年、「このミステリーがすごい!」海外編で第16位)でも有名
である。

http://d.hatena.ne.jp/wakaba-mark/20090827