読書記録31

“当代最高のハードボイルド”“現代ハードボイルドの到達点”といわれるマイクル
・コナリーの<ハリー・ボッシュ>シリーズ第13弾。’10年はコナリー=ボッシュ・ファンにとって嬉しいことに、4月邦訳刊行の『エコー・パーク』とあわせて1年で2作品
楽しめた。
ある春の真夜中、ボッシュは上司から殺人事件発生の報せと出動要請の電話を
受ける。
彼は、前作『エコー・パーク』事件のあと、未解決事件班から殺人事件特別捜査班に
異動しており、その初仕事としてキズミン・ライダーにかわった新しい、ボッシュよりも
20才以上若い相棒・キューバアメリカ人のイグナシオと捜査に当たる。現況の調べが進むと、射殺された被害者が放射性物質を医療用に扱うことのできる医学物理士であり、放射性物質セシウムイスラム系テロリストの犯人たちの手に渡ったことが
わかる。
一大テロ事件として、シリーズでお馴染みのレイチェル・ウォリングをはじめとするFBIや、ロス市警国家安全保障室が乗り出すが、ボッシュはあくまでもロス市警刑事として「殺人事件」そのものの捜査にこだわる。一方で放射性物質によるテロの恐怖があり、一方でボッシュの、連邦政府機関を相手に何者もの横槍も許さない執念の捜査と推理がある。果たして事件の真相は・・・。
本書はもともと、毎週日曜日発行の「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」に連載された作品だけに、ハリー・ボッシュの刑事人生で“いちばん長い”12時間を、各章ごとに
見せ場とエピソードが盛り込まれ、次から次に事態が移る急展開と手に汗握る緊迫感で一気に読ませる逸品である。