読書記録32

’09年、「このミステリーがすごい!」海外編で話題作『ミレニアム』をおさえて断トツ
第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門では第2位に輝いた『犬の力』の次に発表した、前作とはガラリと趣の異なったアメリカ・ニューヨーク出身のハードボイルド作家、ドン・ウィンズロウの10作目の邦訳作品。
’10年、「このミステリーがすごい!」海外編で第4位に、「週刊文春ミステリーベスト
10」海外部門で第9位。また、講談社の文庫情報誌『IN★POCKET』の’10年
11月号「2010年文庫翻訳ミステリー・ベスト10」で「総合」同点第15位、「翻訳家
&評論家が選んだ」部門第14位にランクインしている。
サンディエゴで「釣り客のための餌屋」「魚介販売」「リネン・レンタル」「不動産賃貸」と忙しく複数のビジネスを営み、朝夕にはサーフィンを楽しみ、愛する娘や恋人と
付き合い、別れた元妻とも交友する62才のフランキー。“餌屋のフランク”として
地元住民に親しまれている彼には、元凄腕の殺し屋“フランキー・マシーン”と
呼ばれた知られざる顔があった。
ある冬の日、ロサンゼルスのボスの息子に懇願され、デトロイトマフィアの大物との
交渉に出向いたフランキーは、襲われて危うく命を落としかける。彼を罠にはめ、命を狙うのは誰なのか・・・。
その謎を解くため、フランキーは殺し屋稼業に手を染めた1963年から回想を
はじめる。ストーリーは、彼を付け狙うギャングの若者や、逮捕するべく追いかける
20年来の友人・FBI捜査官デイヴの動きが挿入されながら、過去と現在が激しく
交錯する。そして、最後の戦いが・・・。
かつての、そして現在の、“殺し”の数々。ハンパでない死者の数。老いを迎えつつ
ある男の苦闘。これだけの「殺し屋」ものを題材にしながらも、重苦しく非情なノワールになることなく、遊び心さえ感じさせ、思わず一気読みさせる軽快さを醸し出している。東江一紀(あがりえかずき)の名訳によるところも大きいが、本書をソフトボイルド
・タッチの一大エンターテインメントに仕上げてしまったウィンズロウの筆さばきと手腕には感嘆してしまう。