読書記録33

スカーペッタ 核心(上) (講談社文庫)

スカーペッタ 核心(上) (講談社文庫)

スカーペッタ 核心(下) (講談社文庫)

スカーペッタ 核心(下) (講談社文庫)

邦訳の既刊総計で1,200万部という世紀の大ベストセラー、パトリシア・コーンウェルの<検屍官>シリーズの最新第17弾。訳出は前作『スカーペッタ』に引き続き
ジェフリー・ディーヴァーの<リンカーン・ライム>シリーズで有名な人気翻訳家
池田真紀子。
今回の事件は大きく3つ。ひとつはほぼ1ヶ月前の感謝祭の前日から姿を消した有名な女性投資コンサルタントの失踪事件。ひとつはスカーペッタが検屍を行った、
セントラル・パークで遺体として発見された26才の女性の、ジョッギング中に後頭部を殴打されレイプされ殺された事件。そしてCNNに生出演したスカーペッタの
ニューヨークでの住まいに届けられた怪しい小包の事件。これらの事件を軸に
クリスマスを1週間後に控えた’09年12月18日から翌日にわたっての、お馴染みのシリーズ・キャラクターたちの動きが描かれる。
シリーズも17作目ともなると、第1作目からの過去のエピソードが蓄積され、
スカーペッタの、ベントンの、ルーシーの、バーガーの、そしてマリーノの胸中に去来
するかつてのおぞましい経験の叙述や、誰が誰を、どうして嫌っているとかいうような述懐が物語の大半を占める。そして複雑に絡み合った事件の結末にも過去の“宿敵”の影が・・・。
完全な1話完結ものにできないところがシリーズものの宿命であろうが、どこからでもすんなり入ることのできるシリーズものも少なくない中、やや残念に思った。
とはいえ、本書は’09年にアメリカで起こった社会現象や、事件捜査の最新の
ハイテク機器などが彩りを添え、地味ながらも合議を中心としたFBIの捜査で
一歩一歩解決に近づけるというのは、コーンウェルのこのシリーズの特長なのだろう。それなりの作品には仕上がっている。