読書記録34

サイレント・スクリーン〈上〉 (扶桑社ミステリー)

サイレント・スクリーン〈上〉 (扶桑社ミステリー)

  • 作者: リチャード・ノースパタースン,Richard North Patterson,田村義進
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 1999/07/01
  • メディア: 文庫
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サイレント・スクリーン〈下〉 (扶桑社ミステリー)

サイレント・スクリーン〈下〉 (扶桑社ミステリー)

  • 作者: リチャード・ノースパタースン,Richard North Patterson,田村義進
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 1999/07/01
  • メディア: 文庫
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今日から3回にわたって、いずれも「扶桑社ミステリー文庫」のリーガル・サスペンス
の隠れた名品を「読書記録」する。
本書は、リチャード・ノース・パタースンが『罪の段階』(’92年・邦訳は’98年)で
リーガル・サスペンスの旗手として大ブレイクするひとつ前(といってもその間は足かけ8年のブランクがある)の’85年発表の第4長編である。
本書では、1984年6月の米大統領候補暗殺事件と翌年4月の劇場型誘拐事件
というふたつの大きな事件がメインで語られる。上巻と下巻の途中までは、暗殺の
犯人カースンの弁護をつとめる若き野心家の弁護士トニー(アントニー)・ロードの公判シーンがメインで、そこでは時を遡って1970年6月のヴェトナム戦争時の暗黒の
出来事が被告人に及ぼした悲劇がクローズアップされる。
そして、上巻の冒頭で起こり、下巻の大半を占める翌年の誘拐事件。フェニックスと
名乗る誘拐犯は、サンフランシスコの新聞社社長夫人とロック歌手で今は女優の
ステイシーのマネージャーを誘拐して、その一部始終と要求を全米ネットワークでTV放映するという暴挙に出た。前年に暗殺された、くだんの大統領候補の恋人であったステイシーはトニー・ロードに助力を依頼する。
パタースンは、スケールが大きくセンセーショナルなこのふたつの事件に、過去と現在を複雑に交錯させ、すべてを関連させるという“はなれわざ”をやってのけている。
そればかりか、リーガル・フィクションのスリル、誘拐事件のサスペンス、さらには
家族の、男と女の、親と子の愛憎劇も描かれるといった、読み物としては実に魅力
てんこ盛りのエンターテインメントに仕上げている。
なお、本書の主人公、トニー・ロードは、のちの第8長編『サイレント・ゲーム』(’97年
・邦訳は’03年、同年の「このミステリーがすごい!」海外編第4位)で再登場して活躍する。そこでは本書のヒロイン、ステイシーと結婚している。
文庫にもなっているので、興味のある方はそちらもお読みになるといいだろう。
http://d.hatena.ne.jp/wakaba-mark/20060508