読書記録52

暗殺者 (講談社文庫)

暗殺者 (講談社文庫)

グレッグ・ルッカの、“世界最強のハードボイルド”という惹句が付けられた、プロの
ボディーガード(パーソナル・セキュリティ・エージェント)、<アティカス・コディアック>
シリーズの第3弾。
『守護者−キーパー−』からおよそ1年、『奪回者』から8ヶ月近く経った翌年の7月
4日、独立記念日のニューヨーク。たびかさなる事件に業界ではいまや“厄病神”扱いとなった‘わたし’ことコディアックの下に、仲間で‘わたし’と微妙な関係にあるナタリーの父親でマンハッタン最大の警備保障会社センティネル・ガード社の経営者トレント
から簡単な子守程度と思われる仕事がまわされる。しかしそれには単なる序章に
過ぎず、やがて‘わたし’は命を賭ける事態に直面することになる。
アメリカの大手煙草企業に壊滅的な打撃を与える証言を裁判で行おうとしている証人である老人ピュー。なりふりかまわぬ企業側はピューを亡き者にしようと“テン”と
呼ばれる世界でも超一流の暗殺者のひとりを雇う。ここに「ジョン・ドウ(身元不明人)」
という正体不明・神出鬼没の凄腕の暗殺者を向こうにまわし、裁判のための事前証言録取まで、ピューの命をガードする‘わたし’の死闘が繰り広げられる。
‘わたし’の自宅にまで及ぶ、思わぬ盲点をついた“見えない敵”の攻撃に、危機また危機の連続。裏をかいたつもりが逆に裏をかかれ、一瞬たりとも気を抜けない警護の緊張感。絶対絶命のラストまで、実にスリリングな展開が続く。
本書は、1作ごとに腕を上げるルッカの力量が肌で感じられる、抜群のページ
ターナーである。
なお、本書では、「恐ろしく口の悪い、恐ろしく性格のきつい、恐ろしく矜持の高い」女性私立探偵ブリジット・ローガンが登場しないが、次作『耽溺者−ジャンキー−』では、
‘あたし’として主役を張る。