読書記録53

耽溺者 (講談社文庫)

耽溺者 (講談社文庫)

グレッグ・ルッカの、“世界最強のハードボイルド”という惹句が付けられた、プロの
ボディーガード(パーソナル・セキュリティ・エージェント)、<アティカス・コディアック>
シリーズの第4弾番外編。本書ではアティカスではなく、彼の恋人、女性私立探偵
ブリジット・ローガンが主人公の‘あたし’をつとめる。
第一部:前作『暗殺者−キラー−』の事件からおよそ2ヵ月後の9月2日。未明に
‘あたし’ことブリジットにかかってきた電話は、1年ぶりに話をするという親友で妹の
ようにも思う2才年下のライザからの救いと助けを求めるものだった。ふたりは十代の頃麻薬中毒者(ジャンキー)で、その更生施設で知り合った仲だった。ライザには15才で身ごもった、今は10才の息子もいた。彼女はジャンキーだった過去の売人に5年
ぶりに見つかって自宅へ押し入られたのだ。なんとか、彼を暴力で脅して手を
引かせたつもりの‘あたし’だったが、その3週間後、彼が撃ち殺され、ライザが犯人
として捕まってしまう。
ライザを刑務所送りから救うため、‘あたし’は身辺を整理して危険きわまりない麻薬組織に潜入するのだが・・・。
第二部:クリスマス・イヴ。今度の語り手は‘わたし’ことコディアック。2ヶ月以上も音信不通のブリジットの行方とその目的を探る‘わたし’だったが、このパートは、読者も
‘わたし’と同じ目線で追いかけざるを得ず、目を離すことができないほどの緊張感を味わう。
第三部:翌年1月。親友の窮地を救う‘あたし’の企てが明らかになるのだが、最後の最後まで危険が‘あたし’を襲う。
本書は、親友を救うため、すべてを投げ打って、体を張るヒロインの物語だが、同時にかたく封印していた自らの暗い過去に直面し、それを振り払い、自己の尊厳を取り戻すために闘うドラマでもある。文庫にして658ページの大作だが、一気にストーリーに
ひき込まれること必至である。