読書記録69

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

’98年、『Jの神話』で、講談社が主催する新人ミステリー作家の登竜門「第4回
メフィスト賞」を受賞してデビューした乾くるみ静岡県の出身で、ペンネームから女性に間違われることもあるが男性。本書は、’04年4月に原書房のミステリー叢書
<ミステリー・リーグ>のラインナップの一冊として刊行。圧倒的な話題を集め、’07年4月に文庫化され、順調に版を重ね読み継がれている“伝説”のベストセラーである。
’04年、「このミステリーがすごい!」国内編で第12位ランクインしている。
本書のことはタイトルと著者名だけは知っていたが、読もうと思ったのは、ある夜
「BS11」の≪ベストセラーBOOK・TV≫を観ていたらゲストの某出版社の人が、昨今のミステリーの特長の最たる例として本書を挙げて、「普通の恋愛小説だと思って
読んでいたら、最後の最後にこの本はミステリーだったんだと知る」と言ったのが
きっかけだ。
なるほど、’80年代後半と思われる時代の‘僕’こと「たっくん」と「マユ」との甘く
ほろ苦い恋愛物語が、当時の流行・風俗・ファッションにのせて、また、ミュージック
・アルバムを模したside-A、side-Bと’70年代・’80年代のヒットソングのタイトルを
冠した各章を追って展開される。
そして・・・、最後から二行目と大矢博子の解説を読んで、乾くるみの企みを初めて
知ることになる。なるほど読んでいて少し妙だなというひっかかりはあったのだが・・・。
それにしても、ちょうどその同じ時代、私も20代後半だった頃を懐かしく思い出して、ふたりの恋の行方に胸をつまらせ、“身を焦がすような”恋愛小説として本書に没頭
してしまった自分は何だったんだろう。