読書記録74

弁護人〈上〉 (講談社文庫)

弁護人〈上〉 (講談社文庫)

弁護人〈下〉 (講談社文庫)

弁護人〈下〉 (講談社文庫)

アメリカの中堅人気作家スティーヴ・マルティニによる、弁護士<ポール・マドリアニ>シリーズの’99年発表の第5弾である。
先日、この2月に邦訳された第8弾にあたる『策謀の法廷』(’05年)を読んで、その
読み応えに感銘を受けて既刊の作品を探して読むことにした5冊目である。
愛娘セーラの11才という年齢と、妻ニッキーが他界した年から類推して、前作
『裁かれる判事』事件解決からおよそ3年後。‘わたし’ことマドリアニは、活動の拠点をカリフォルニア州の州都サクラメントから州南部・メキシコとの国境に近いサンディエゴに移した。本書で重要な役割を果たす新しい恋人でサンディエゴ児童保護局長
スーザンの存在も大きかった。
そんな‘わたし’のもとに10年以上前、新人弁護士時代の古い知り合いヨナが
訪れる。ヨナは元工場労働者で今は高額な宝くじ当選長者だ。彼は麻薬常習者の
娘に連れ去られた孫娘アマンダを取り返して欲しいと言う。この“誘拐”には過激な
女性擁護組織がからんでいた。組織に対する怒りに燃えるヨナだったが、その組織の女性代表が射殺死体で発見されるに及んで、第一級謀殺の容疑で逮捕・起訴されてしまう。
アリバイもなく、明らかな物的証拠から、シリーズを通してみても絶望的に不利な裁判にのぞむ‘わたし’だったが、メキシコの麻薬密売組織がからんで、重要な証人と
なるべき者が消され、‘わたし’にも魔の手が伸びる・・・。
本書は、法廷での攻防はもちろん、シリーズ第2作『重要証人』以降で見られる、ラストの法廷外の体を張ったアクションでの解決に読み応えがあるが、さらにその先に
“どんでん返し”も用意されていた。まさに“謎解き派”リーガル・サスペンスと呼ぶに
ふさわしい作品である。