読書記録79

反撃〈上〉 (講談社文庫)

反撃〈上〉 (講談社文庫)

反撃〈下〉 (講談社文庫)

反撃〈下〉 (講談社文庫)

現時点で15作が上梓されている、リー・チャイルドによる、ニュー・ハードボイルド
・元軍人<ジャック・リーチャー>シリーズの’98年発表の第2作。
前作ジョージア州での『キリング・フロアー』事件からおよそ1年後の6月最後の日。
シカゴのブルース・バーのドアマンをしているリーチャーは、あるクリーニング店の前で足の不自由な客の若い女性をほんの親切心から手助けをしたところ、何者かに銃を突きつけられる。彼はその女性と共に拉致・誘拐される。女性は27才、FBIシカゴ
支局の捜査官で米軍統合参謀本部議長ジョンスン将軍の娘で、時の大統領がその
名付け親であるホリー。言うまでもなく誘拐犯の狙いはホリーで、リーチャーはたまたま居合わせて巻き添えを食ったのだ。
ふたりはシカゴから西へ約1,700マイル(2,740キロ)離れたモンタナ州のはずれの山奥まで二昼夜をかけて連れて行かれる。そこは、アメリカ政府からの独立を企む
民兵組織の要塞だった。
ストーリーは、前作のリーチャーの一人称単視点叙述とは異なり三人称叙述で、誘拐
されたふたり、誘拐した民兵組織のリーダーや手下たち、そしてふたりの行方を捜索
するFBI捜査官たちと軍が、映画のカットバックのような手法で、それぞれ視点を
変えて読者を惹きつけつつテンポ良く進行する。
民兵組織の真の目的は・・・、救出側の手立ては・・・、リーチャーたちの脱出は・・・、
7月4日の米独立記念日に向かってサスペンスは盛り上がる。
本書は、リーチャーという男の魅力を存分に描き出しながらも、前作とはひと味違う
スケールの大きな物語である。